ステルスマーケティング規制とは?景表法の告示と見分け方
ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠して行う表示のことです。日本では2023年10月1日から、ステマが景品表示法の不当表示として規制されています。根拠は、景品表示法第5条第3号に基づく告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)です。
規制の対象になるのは、広告主である事業者です。インフルエンサーやアフィリエイターなど、広告主から依頼を受けて投稿する側が直接の処分対象になるわけではありません。ただし、広告主は第三者の投稿でも「広告である」ことを明瞭にさせる必要があるため、実務では投稿する側の表記が事実上重要になります。
この記事では、消費者庁の告示・運用基準・Q&Aなどの一次情報をもとに、規制の内容、運用基準が示す判断のしかた、広告主とアフィリエイター側が取るべき対応、消費者としてのステマ・偽レビューの見分け方、相談窓口を整理します。情報は2026年10月6日時点で確認したものです。
ステルスマーケティング規制の概要(景品表示法の告示)
景品表示法は、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスを選べるようにするため、実際より良く見せる不当な表示を禁止しています。第5条第3号は、このほか誤認されるおそれがあり内閣総理大臣が指定する表示も禁止の対象としており、2023年10月1日に、この指定として「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が加わりました。運用基準は2023年3月28日に消費者庁長官決定として定められています。
消費者庁の運用基準によれば、規制の考え方は次のとおりです。人は「事業者の表示」だと分かっていれば、ある程度の誇張や誇大が含まれることはあり得ると考えて、割り引いて受け止めます。ところが実際は事業者の表示なのに第三者の感想のように見えると、そうした割引をせずに受け取ってしまい、商品選択の自主的・合理的な判断が妨げられるおそれがあります。そのため、事業者の表示であることを隠した表示そのものが規制されます。
ここで大切なのは、表示の内容が事実かどうかとは別に、広告であることを明らかにしていないこと自体が問題になるという点です。商品の効果が本当であっても、広告であることを隠せば告示の対象になり得ます。
消費者庁は、ステマ規制に関するページで、規制対象を「広告主(事業者)」とし、媒体を問わず(SNS、レビュー、動画、テレビ、新聞など)対象になると説明しています。
「事業者の表示」とは?運用基準が示す判断の考え方
告示が対象にするのは、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引について行う表示です。見た目は第三者の投稿であっても、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合は、事業者の表示になります。運用基準は、客観的な状況に基づいて、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるかどうかで判断するとしています。
事業者の表示になる場合
- 事業者が第三者に対して、特定の内容の表示をするよう明示的に依頼・指示した場合
- 明示的な依頼・指示がなくても、事業者と第三者の関係性から、表示内容が第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合。たとえば、SNSでの投稿を依頼して商品を無償提供し、その第三者が事業者の方針に沿った表示をした場合などが挙げられています。また、自社の商品について投稿することが第三者に経済上の利益をもたらすことを、言外ににおわせたり言動から推認させたりした結果、投稿された場合も含まれます
判断の際は、事業者と第三者のやり取りの内容、表示内容の決定に関する関係、過去や今後の取引関係など実態を総合的に考慮します。対価は金銭に限らず、物品や、イベントへの招待などの経済上の利益を含みます。
事業者の表示にならない例
運用基準は、第三者の自主的な意思による表示と認められるものとして、次のような例を挙げています。
- 第三者が自分の好みで、SNS等に商品について自発的に投稿する場合
- 事業者が商品を無償提供してSNS投稿を依頼しても、第三者が自主的な意思に基づく内容として投稿する場合
- アフィリエイターの表示であっても、事業者との間で表示に係る情報のやり取りが直接・間接に一切行われていないなど、広告主による広告とは認められない実態にある場合
- ECサイトのレビュー機能を通じて、購入者が自主的な意思で投稿する場合。購入者の投稿に対して次回割引クーポン等を配布していても、事業者(仲介事業者を含む)と購入者の間で投稿内容について情報のやり取りが一切なく、購入者が自主的に内容を決めたと認められるときは、事業者の表示にならない
- 事業者が自社サイトで第三者の表示を使う場合でも、恣意的な抽出や内容の変更をせず、そのまま引用している場合
このほか、新聞・雑誌・放送など媒体事業者が自主的な意思で企画・編集・制作した表示は、通常は事業者の表示になりません。ただし、通常の取材協力費を大きく超える金銭等の提供など、正常な商慣習を超えた実態がある場合は、事業者が内容の決定に関与したとされ得ます。
注意したい点
たとえば、レビューを書いた購入者に割引クーポンを配ること自体が直ちに違反になるわけではありません。しかし、「高評価を書いてほしい」など内容をコントロールすれば、事業者の表示になる可能性があります。運用基準は、事業者が他の事業者に依頼して競合の商品を低く評価する口コミを投稿させる場合も、事業者の表示の例として挙げています。
広告と分かる表示のしかた:判別困難とされる例と明瞭とされる例
事業者の表示だと判断された場合でも、一般消費者がそれと分かるように明瞭に表示していれば、告示の対象になりません。運用基準は、判別困難とされる例と、明瞭とされる例を具体的に示しています。
判別困難とされる例(運用基準)
- 事業者の表示であることが全く書かれていない
- アフィリエイトプログラムを使った表示で、アフィリエイトサイトに事業者の表示であることを書いていない
- 表示がその一部だけで、文章の冒頭に「広告」とあるのに、文中に「これは第三者として感想を記載しています」などと矛盾する記載がある
- 動画で、認識できないほど短い時間しか表示しない。長い動画で、中間や末尾にだけ表示する
- 一般消費者が事業者の表示と認識できない言葉を使う
- 表示の末尾など見にくい位置に書く、周囲より小さい文字、薄い色、長文に埋もれる形で書く
- SNSで大量のハッシュタグの中に埋もれさせる
明瞭とされる例
- 「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言で表示する(ただし、表示全体から見て事業者の表示と分からない場合もあるとされています)
- 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で表示する
消費者庁のQ&Aでは、広告主から依頼を受けたことを示す表現の例として、「Z社の依頼で投稿しています」といった書き方が示されています。また、投稿本体ではなくリプライ欄や、長いスレッドの奥に表示するだけでは、一般消費者に明瞭とはいえない可能性が高いとされています。
なお、事業者自身のウェブサイトやSNSアカウント、テレビCMのように広告と番組が切り離されている場合、新聞の広告欄のように「広告」と書かれている場合などは、事業者の表示であることが明らかなため、告示の対象になりません。ただし、自社サイトの一部であっても、専門家や一般消費者の客観的な意見のように見せて実は事業者の表示であるページは、誤認されるおそれがあるとされています。
事業者・広告主・アフィリエイター側の対応
処分の対象になるのは広告主ですが、広告主だけでなく、依頼を受けて投稿するアフィリエイターやインフルエンサーも、実務上の対応が必要です。消費者庁の運用基準は、広告主が第三者の表示でも事業者の表示であることを明瞭にしなければならない結果、第三者の表示にも一定の制約が事実上課せられるが、これは自由な表現活動を不当に制約する趣旨ではないと説明しています。
広告主(事業者)が整えておくこと
- 自社の広告が、どの媒体・どの委託先を通じて出ているかを把握する(広告代理店、アフィリエイト事業者、インフルエンサー等)
- 依頼・契約の際に、広告であることの明示を義務づける。表記の方法(位置、文言、大きさ、動画なら表示のタイミング)まで具体的に決める
- 投稿の確認と、表記が抜けている場合の是正・削除の運用ルールを決める
- 口コミ・レビューの扱いを決める。割引や謝礼をつけてレビューを募るなら、内容に口を出さない。良い意見だけを選んで載せるなど、恣意的な抽出や加工をしない(運用基準・Q&Aの考え方)
- やり取りの記録(依頼内容、確認結果、是正対応)を残す
アフィリエイター・インフルエンサー側の対応
- 広告主から報酬や無償提供を受けて書く内容には、本文の最初など目立つ位置に「広告」「PR」「A社から商品の提供を受けて投稿」などと明記する
- ハッシュタグの大量列挙の中に書く、小さく薄く書く、末尾にだけ書く、といったことは避ける
- 動画では、冒頭など視聴者が見落としにくい位置に、十分な時間表示する
- 報酬・提供を受けていない、自分の好みによる自発的な投稿は、ステマ規制の対象外になり得ますが、事実と違う内容を書かない
違反した場合
消費者庁のQ&Aによれば、告示に違反した場合、広告主は措置命令の対象になり得ます。措置命令では、違反行為の差止めや再発防止策の実施などが命じられます。違反の証拠が十分でない場合などには、行政指導にとどまる場合があるとされています。なお、令和5年の景品表示法改正(2024年10月1日施行)で導入された確約手続や直罰規定は、優良誤認表示・有利誤認表示などの規定に関するものです。個別の事案の取扱いは、弁護士など専門家か、消費者庁表示対策課に確認してください。
ステマの見分け方・偽レビューの見分け方:消費者向けチェック
ステマや偽レビューは、見た目だけでは完全に見分けられません。確実に判定する方法はなく、複数の手がかりを組み合わせて「疑う目」を持つことが現実的な対策です。以下は消費者庁の運用基準で判別困難とされる表示の例を参考にした、見分け方の目安です。
投稿・記事を見るときのポイント
- 「広告」「PR」「提供」などの表記があるか。表記が見つからない、極端に小さい・薄い・末尾にだけある、ハッシュタグの中に埋もれていないか
- 商品の良い点しか書かれていないか。欠点や条件、向かない人に触れた記述が一切ないか
- 特定の商品へのリンクや割引コードがセットになっていないか。比較記事の体裁でも、自社サイトの商品を紹介しているだけではないか
- 投稿者が同じ商品を、短期間に多数の別アカウントやサイトで、似た文面で紹介していないか
レビュー(口コミ)を見るときのポイント
- 高評価が短期間に集中していないか。文面や言い回しが似通っていないか
- 商品の具体的な使い方や不満点、使用感の描写があるか。「とても良かったです」だけの短い称賛ばかりでないか
- 低評価の内容にも目を通して、それに対する事業者の対応が誠実か
- 公式サイトの「お客様の声」は、事業者が選んで載せたものである可能性を踏まえる
購入前にできること
- 1つのサイトの評価だけで決めず、公式情報、公的機関の情報、複数の販売サイトを見比べる
- 効果を断定する宣伝(短期間で大幅に痩せる等)は、根拠が示されているかを確認する
- 事業者の連絡先、返品・解約の条件を確認する
もし、広告であることを隠している疑いがある投稿・記事を見つけたら、消費者庁の景品表示法違反被疑情報提供フォーム(ステルスマーケティングに関するもの)から情報提供ができます。個別の被害の救済を行う窓口ではない点に注意してください。
ステマ・偽レビューで困ったときの相談窓口
ステマや不当な広告表示によって契約してしまった、返金や解約に応じてもらえない、といった場合の窓口は次のとおりです。
- 消費者ホットライン「188」:全国共通の電話番号で、お近くの消費生活センターや消費生活相談窓口につながります。契約・解約や返金に関する個別の相談はこちらです。
- 消費者庁の景品表示法違反被疑情報提供フォーム:ステルスマーケティングが疑われる表示について、情報を提供できます。行政が調査する際の端緒になる窓口で、個別の救済を行うものではありません。
- クレジットカード会社・決済事業者:不審な請求には、カード会社への連絡も検討してください。
相談の際は、問題の投稿や記事の画面(スクリーンショットとURL)、注文内容、請求明細、事業者とのやり取りを手元にそろえておくと、状況が伝わりやすくなります。この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的助言ではありません。画面設計全般の問題については、関連記事「ダークパターンとは」も参考にしてください。
よくある質問
ステルスマーケティング規制はいつから始まりましたか?
2023年10月1日からです。景品表示法第5条第3号に基づく告示「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)が施行され、運用基準は2023年3月28日に消費者庁長官決定として定められました。
ステマ規制で処分されるのは誰ですか?
表示の主体である広告主(事業者)です。消費者庁は、インフルエンサーやアフィリエイターなど依頼を受けて投稿する側は告示の規制対象ではないと説明しています。ただし、広告主は事業者の表示であることを明瞭にする必要があるため、投稿する側にも広告である旨の表記が実務上求められます。
「PR」や「広告」と書けば問題ないですか?
運用基準は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言での表示を明瞭な例としています。ただし、表示全体から事業者の表示と分からない場合もあるとされ、小さな文字、薄い色、ハッシュタグの中に埋もれた表記、動画の短時間表示などは判別困難な例に挙げられています。
商品を無料でもらって感想を投稿するときは、広告の表記が必要ですか?
事業者から投稿を依頼されたり、内容が事業者の方針に沿ったりしている場合は、事業者の表示になり得るため、「A社から商品の提供を受けて投稿している」などの明記が必要です。一方、運用基準は、無償提供や依頼があっても、投稿者が自主的な意思に基づく内容として投稿する場合は事業者の表示とならないとしています。判断に迷う場合は、広告主と相談して明示するのが安全です。
ステマや偽レビューを見つけたらどうすればよいですか?
契約や返金に関するトラブルは消費者ホットライン「188」に相談できます。ステルスマーケティングが疑われる表示は、消費者庁の景品表示法違反被疑情報提供フォームから情報を提供できます。いずれも、問題の画面のスクリーンショットとURLを保存しておくと役立ちます。
出典・参考資料
最終確認日:2026-10-06。制度・仕様は変更されることがあるため、実施前に各一次情報をご確認ください。
- 消費者庁 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります
- 消費者庁 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日)
- 消費者庁 告示の指定及び運用基準の公表について
- 消費者庁 ステルスマーケティングに関するQ&A
- 消費者庁 景品表示法違反被疑情報提供フォーム(ステルスマーケティング)